結婚の申し込み

娘が私に耳打ちした。
「彼が今度の土曜日に結婚の申し込みに来ると言っていたけどかまわない」
との言葉に嬉しさがこみ上げてきた。
主人に話すと 「そうか」とたった1言。親戚の者から娘がお嫁に行くときはきっと大泣きするよと言われる位、娘を可愛がっていたので何かぶすくさ言うだろうと思っていたのに…….

それから私は忙しくなった。何がですって。もちろん掃除よ。窓ガラスに始まって至る所ぴかぴかに磨きをかけて土曜日を待った。

当日彼が来て、私達に深々と頭を下げ 「今日はお願いに上がりました」と言ったとたん
主人が 「ふつつかな娘ですがよろしくと」と言ったのですよ。ただお願いが有りますと聞いただけで…….
彼の顔を見ると目がうつろでした。「お嬢さんと結婚させてください」と言おうとしたとたんに先に
「ふつつか…….」と来たものですから。何とか結婚の申し込みも終わりその日は無事終わりました。

娘から聞いた話ですが後で彼が寂しそうに言った言葉何だったと思います。それはね。
「お嬢さんと結婚させてください。」と申し込むと普通は「ふつつかな娘ですがどうかよろしく」と言うだろう。そうすると 「僕は一生大切にしますと言おうと思い色々考えていたそうです。
娘は「私彼のその言葉を聞きたかった」と恨めしそうに言うし…….優しくておとなしい主人は緊張のあまり先走ってしまったのです。笑い話の様でしょう。でも本当のお話なのですよ。

娘は薬科大学を卒業して一流企業の研究開発部に就職したのに、一年もたたない内に結婚しました。
結婚式の当日みんなの期待・通り主人は大泣きして目を腫らしていました。私は嬉しくて式の間中ニコニコしていました。他人の目にはどう写ったかしら?」